問題が生じて解決が難しい時に陥りやすい過ちは、早く解決したい、早く楽になりたいと思って、今の自分を受け入れなくなることです。そして、そのような人に、今の自分を受け入れなさいと言うと、今の自分の状態は分かっている、そんなことは問題の解決にならない、と言われることが多いのです。
先日、何もする気が起きずに何も行動できない。何もしないでいるのは辛い、生きているとは言えない、と思うので苦しい、と相談されました。私の答えは、先ず最初に今の自分を受け入れることからスタートしなさい、でした。「行動ができない」という問題に対して、私は「そういう今の自分を受け入れなさい」と返事したのです。
そうすると「受け入れたらその後どう行動すればいいのか」と質問されました。未だ受け入れていないのにもかかわらず、受け入れた後のことを考え始めるのです。
それで私は「受け入れたら行動するはずがない」と答えました。そうすると今度は「行動しなければ生きているとは言えない」という応えが返ってきました。
これら一連のやりとりの意味がわかりますか?多くの人が常に「今」の自分がどうであるかではなく、「こうでありたい、あるべきだ」の自分から問題を考えているのです。今の自分にできないことではなく、できることを考えて実行したらよいのですが、それがなかなかできません。
「こうでありたい、こうあるべきだ」という自分は今の自分ではありませんから、そこから考えたことは今の自分にできるはずがないのです。逆に「今の自分はこうだ」から出発すれば、何ができるかが分かり実行することが可能になります。
上記の例で言えば、今の自分は行動ができない自分なのです。ですから今の自分にできることは「行動しない」ことです。それをきちんとやらないで、実行できない自分の欲望ばかりを追っていても一歩も前進できないのは当然です。「生きることは行動することだ」ということ自体は間違っていませんが、それ以前の問題があるということなのです。どんな人でも、その人がいる場所からしか出発できません。