感謝するということは、一般的には良いこととされています。確かに感謝すること自体は良いことですが、感謝をなぜするのかによって、必ずしも良い結
果を生み出すとは限りません。
普通に感謝すると言うときは、その感謝は自我から生まれたものです。すなわち、自分に何かをしてくれたり何かを与えてくれたものとの関係に基づいてなされるものです。本当の感謝は相手との関係ではなく、自分自身への謙虚さから生まれるものです。その結果として、感謝が自然にできる状態が続けば、幸せへと進みます。
逆に、感謝しなければとか、感謝すべきだから、という思いで感謝したときは、自我が働いています。つまり、自分にとってそうすることが良いことだからという理由から感謝するわけです。その結果、感謝しても余計自我が強まるだけです。そして自我が強まれば幸せは遠ざかっていきます。
ですから、「感謝しなさい」という教えは、基本的には間違っています。他の多くの「良いこと、善なること」などと同様に、「感謝する」はあくまで成長の結果得られるものであって、成長の手段ではないのです。
多くの宗教や道徳がそこを間違えます。それが、宗教戦争の原因なのです。自分が正しいと思ったこと、そうあるべきだと思ったことを、相手との関係の中で要求するわけです。たとえ良かれと思ってすることでも、それは相手を支配することにつながります。
ただし、感謝することの意味を正しく理解し、自分が感謝する気持ちの状態になったときに、その状態を意識化することは、成長の促進となります。感謝はするべきだからするのではなく、したいからするのです。そうでなく感謝すれば、必ず他者に対しても感謝することを求めるようになります。感謝を求めることの愚かしさは誰にでもわかるでしょう。
上記のような正しい理解に基づいて、感謝する(より正確には、感謝できる心の状態でいる)ことが大事だと知っていることは、あなたの成長に大変役に立ちます。