人の役に立ちたいと思うのは人間に備わった自然な情動です。
それは、社会生活でしか生きることのできない人間が、
互いを必要とするために発達した感情だからです。
しかし現代社会においては、競争や格差の問題から、
自分さえよければ良いという風潮も強くなっています。
一方、他者の役に立ちたいという気持ちは、
上記の理由によって私たちに備わっている、いわば本能のようなものですから、
現代においても完全に忘れ去られることはありません。
最近大人気の「鬼滅の刃」の根底に流れるテーマは「利他」だと思いますが、
コロナという社会全体の危険が生じた状況下で、
他者の役に立ちたいという本能的な欲求が強く感じられるようになり、
その変化に呼応していることも人気が出た大きな原因でしょう。
しかし、現実の社会では、漫画ほど単純ではなく、
鬼のようにはっきりした具体的な、しかも他者と共通の敵は殆どの場合に存在せず、
また何かをしてあげても時として誤解されたり拒否されたりすることが多いものです。
そのために、他者の役に立とうとすることは日常の中では単純ではありません。
しかしそれでも、他者の役に立ちたいという欲求自体は、
自分が社会のなかで幸せになるためには、根本的に大事なものです。
なぜなら、利他を実践すれば必ずいつか自分自身へのプラスが巡ってくるからです。
どうすれば、マイナスを生み出すことなく、その欲求を実現できるのでしょうか?
どうすれば、社会の中で自分を犠牲にせずに健全に生きながら、
同時に利他を実践するというバランスを取ることができるのでしょうか?
その最も根本的な解決は、自分が本来の在り方になることです。
そのうえでマイナスを抱えている人へ働き掛けることができれば問題は生じません。
そのような働き掛けが拒否されたり、または働き掛ける機会が無い時でも、
自分が本来の在り方になっていれば、それだけで他者の役に立つのです。
なぜなら、本来の在り方であれば、
自然にその人の最大のプラスのエネルギーが発散されるからです。
そのプラスのエネルギーは周りの人々によって無意識のうちに受け取られます。
敏感な人なら受け取っていることに気づく場合もあるでしょう。
気づいてもらえなくても、評価や感謝を求めるためでないのなら、
純粋に他者の役に立つことができるというものです。