カルマとは自分がした行為の反作用です。単純に考えると悪い事をすると悪い事が戻り、良い事をすると良い事が戻ると考えられますが、実際にはそう単純ではありません。現実の世を見ればわかることです。
一つの行為は連鎖反応で無数の存在に影響を与え、それらを通して反作用が戻るので、インドではカルマの結果は神でも分からないと言われています。
結果はわかりませんが、自分の行為の反作用であることに違いはないわけです。
よく前世のカルマによって現在の苦しみがあるとか、前世の罪を償っているとか言う場合がありますが、前世のカルマを常に今生の体験の原因とすることには問題があります。苦しみの解決を遠ざけ、同じ過ちを繰り返すことになる場合があるからです。
上記のように自分の行為の反作用の最終的な結果はわかりませんが、それが自分の行為の反作用であることは確かなわけです。現世での行為、特に時間的に短い過去の行為の場合は原因ー結果が理解しやすいものです。そのような場合には、反省して同じ過ちを繰り返さない努力が可能です。しかし時間的に長い過去の場合、特に前世という概念を持ち込むと、その因果関係ははっきりとは分からない場合が多いものです。
そのような差を理解すれば、カルマをどのように理解するのが自分にとって良いのか分かるはずです。大事なことは、カルマや前世といった概念が正しいか否かではなく、現在の苦しみに対処するためにカルマという考え方をどのように受け止めるかが重要なのです。
現在の苦しみの原因が分かる場合には、過去のカルマだと言ってそのままにしておくのではなく、その原因を取り除く努力が必要です。原因が分からないときに、またはその苦しみに耐えがたいときには、過去のカルマのせいにして心の負担を軽くすることもよいでしょう。
大事なことは、現在の自分の生をより豊かにより明るくするために、今できることをすることなのです。そのためにカルマという考え方が役立つなら役立ててればよいのです。そうではなくカルマを理由にすべての問題から逃避するなら、それはカルマという概念の使い方を間違っていることになります。