葛藤は自分の内に相反するネエルギーがあるときに生まれます。
相反するエネルギーには、いろいろあります。
善と悪、プラスとマイナス、義理と人情、欲望と道徳、等々。
しかしそのもっとも根本的なものは、「不安」と自分の内に湧き上がる「求める心」の葛藤です。
以前受けた相談ですが、暴力を振るう夫と離婚したい妻の例で説明しましょう。
離婚しなければいつか殺されてしまう、
けれども離婚したら経済的に一人では生きていけない、これが葛藤です。
心の中に相反するエネルギーが二つあり、そのどちらも捨てることができないわけです。
その状態が続く限り救いはどこにもありません。
どちらも捨てることができないのは、「思い込み」から自由になっていないからです。
結婚を続けても殺されないように生きることはできるでしょうし(実際今まで生きてきた)、
離婚しても一人でどうにか生きていくことは必ずできます。
どちらを選んでも生きていけない、というのは「思い込み」に過ぎません。
ですから救われるには、思い込みから自由になり、どちらかを選ばなければならないのです。
この例だけでなく、多くの場合の葛藤の根本は、「求める気持ち」と「不安」なのです。
「不安」はあなたの内にある感情です。
「不安」に従えば、今の状態を続けることになるので新たなものを得ることはできません。
「求める気持ち」に従えば、何らかの新たな行動や現象を生み出すことになります。
一方、「不安」に従えば、今得ているものを失うリスクはありません。
「求める気持ち」に従えば、今得ているものを失うリスクが生じます。
ですから、結論は単純で、各々の得失を考えれば良いことになります。
「不安」に従って現状維持を選んだ方が良い場合もあるし、
「求める気持ち」に従って新たな何かを得た方が良い場合もあります。
このように考えれば、判断をすることはそれほど難しいことではありませんが、
しかし、不安という感情の成り立ちは多くの場合それほど単純ではありません。
不安は多くの場合に、無意識層にある抑圧によって作られます。
そして無意識の抑圧は、それが意識しにくい故になかなか解放することが難しいのです。
一般に抑圧は、生まれてからすぐに始まった親による規制が始まりです。
少なくても子供のころは絶対権力を持っていた親によって、
あなたの気持ちを無視してあなたの行動や考えが無理強いされたことによって始まるのです。
そのために、あなたは親つまり社会が期待することに従わなければならない、
という無意識の強迫観念を持つようになるのです。
しかし、いくらそれが強くても、自分の内に湧き上がる気持ちは無視できないので、
そこに上記で説明した「葛藤」が生まれることになります。
それがいろいろな面に常にあるので、長い間に無意識の層に隠された抑圧になるのです。
それでは、そのようにして作られてしまった無意識の抑圧を解放するにはどうすればよいのでしょうか?
それはいわば心の癖のようなものですから、解放するための努力をしなければなりません。
その努力とは、自分が何かを求めたときに、それを抑えようとする気持ちが出たら、
その両者を明確にあるがままに意識することが第一歩となります。
次に、抑えようとする気持ちが単なる気持ちだけなのか、
または求める気持ちに従うことで、
実際に現象レベルでマイナスが生じるのか、それを判断します。
大きなマイナスが生じると判断したら、
求める心は押さえて行動を抑制し次の機会を待ちます。
もし実際のマイナスが生じるというよりも、
単に自分の気持ちが抑制的に働いているのだったら、
勇気を出して自分の求める気持ちに従って行動するのです。
あくまで、そのときの感情ではなく心の状態をあるがままに知り、
次に自分の行動によって導かれる現象を知的に考えることによって判断するのです。
最初はなかなかうまくいかないかもしれませんが、
このような対処を何度も繰り返して努力することによってのみ、
無意識の層に入っている抑圧から解放されることが可能になります。