感情の扱い方

感情について最初に理解しなければいけないのは、
それが意識的に作られるものではないことです。
その点が考えとは違います。

考えることについては意識的に扱えます。
たとえば、考えても分からないことは考えない、
解決のために必要なことは考える、
解決のため以外にはマイナスのことは考えない、
といった具合に自分で考えるか考えないか決めることができます。

しかし感情は基本的にはそうはいきません。
感情は作ろうとして作るのではなく、
気づいたときにはすでに生まれています。

特殊な場合として、意識的に感情を作ろうとする時は、
自分以外の存在が必要です。
たとえば泣きたいと思って悲劇を観るとか、
喜びを感じるために幼子に接するといった具合です。

それに反して、考えるときは自分以外の存在を必要としません。
自分の頭の中だけで作業することができます。

このように、感情は自分以外の存在によって、
無意識のうちに発生するものですから、
自己コントロールできないものなのです。

ですから、日常の生活の中で大事なのは、
マイナス感情がなるべく生まれないように、
プラス感情がなるべく多くなるように、
予め工夫しながら生きることなのです。

その意識を持たない人が多すぎます。
その工夫や努力をしないでいて、
マイナス感情が生まれてからどうにかしようとするだけなのです。

自己コントロールできないものなのですから、
予め自分以外のまわりの状態や人間関係を、
マイナス感情が生まれにくくしておくしかないのです。

そのような工夫をしていても他者からの影響によって、
マイナス感情が生まれてしまうことはあります。
どう対処すればよいでしょうか?

一番いけないのは、
やみくもに抑えたり忘れようとすることです。
そうするとマイナス感情のエネルギーは消えずに溜め込まれます。
溜め込まれることが続くといつか限度を超えたときに、
爆発的に解放されるので危険なのです。

ですから正しい対応は、それが生まれた原因を考えて、
将来そのような事態が繰り返されないようにすることです。

しかし、原因を明らかにして除くことができたとして、
その特定の原因によるものは繰り返されないとしても、
他者からマイナスを受けることは人生で永遠に続きます。
その原因の一つ一つをつぶしていくことは無限の作業になるでしょう。

それに加えて、往々にして感情が生まれた時、
なぜそれが生まれた分からないことも多いものです。
なぜ不愉快になるのか、なぜ悲しいのか、
なぜ嬉しいのか、なぜ興奮するのか、
その時その場では分からないことがあるものです。
人間という複雑な在り方のゆえです。

ですから感情に対する根本的な対応は、
瞑想的な対応しかありません。

その対応とは、感情というエネルギーが自分の内で、
生まれ、増幅し、漸減して消滅する、という変化を見届けることです。
だれでもマイナス感情からは一刻も早く離れたいのですが、
そうせずにそのままにして、上記の変化を見届けるのです。

これを繰り返せば、感情エネルギーは、
それがマイナスであろうとプラスであろうと、
他のすべてのエネルギーと同様に、
必ず変化し消滅するものだと体験することができます。

この体験を繰り返し信じることができるようになれば、
日常生活の中でマイナス感情に襲われたときに、
それにとらわれて、
自分やまわりを傷つける言動をしないで済むようになります。
逆にプラス感情が強いときに、
調子に乗って、
軽はずみな言動をすることも無くなるでしょう。

注意点が一つあります。
それは感情が生まれると、
殆ど無意識に考え始めるのが普通だということです。

考えることは上記で述べたように、
自己コントロールできるものですから、
その感情に対して考え始めたと分かったら、
すぐに離れてください。

考えは感情に火を注ぐことが多いので避けなければなりません。
また考え始めると、上記で述べた、
感情エネルギーの変化を見届けることはできなくなります。

感情は動くに任せて観続ける、
考えからは離れる、
その両方を続ける対処が重要です。