欲望と執着の違い

欲望は人間が生きるうえで必要であるだけでなく、人生を楽しむために欠かせない喜びを得る源です。ですから精神世界でよく言われる、欲望を捨てなければならない、というのは、現実の人生を幸せにするためには間違った考え方です。

一方執着は、苦しみの源以外のなにものでもありません。しかし、欲望と執着の違いを理解している人は多くありません。執着を捨てるつもりで欲望を捨てようとすることが多いのです。そうすると欲望を捨てるという不可能なことをしようとするのでかえって真理への道を歩むことを難しくしてしまうのです。

欲望と執着の違いが最もはっきりと表れるのは、欲望が満たされなかったときです。欲望が満たされなかったときに、どのような状態になるか、それであなたが持っていたのが欲望なのか執着なのかが明らかになります。

多くの場合に、欲望が満たされない場合が苦しみ、と理解されますが、正確には満たされない欲望は不満足、なのです。そして執着の場合はその不満足が苦しみになり、欲望だけであればその不満足が不満足のままに終わり、一時的な気持ちの在り様として程なく消えていきます。しかし執着であればそう簡単には消えず、不満足にとどまらず苦しみへと成長するのです。ですから、欲望だけであれば、たとえそれが満たされなくても苦しみにはならないのです。

人生を楽しむためには、欲望を持つことを恐れず、同時に執着を持たないようにすることが肝心です。