自分を大事にするとは、自分を中心にして生きる、つまり自分を優先して生きるということです。このように言うと、自分だけを大事にして他はどうでもよい、と言っていると思うかもしれませんが、そうではありません。自分にとってプラスになることを求め、マイナスになることを避ける、という生き方を、表面的にではなく根本的なレベルで実行する生き方を意味するのです。
表面的なレベルで理解すると自分勝手な生き方となりますが、根本的に考えると、他者にマイナスを与えながら自分がプラスを得るということは、長期的根本的に見れば不可能です。カルマの法則によって、他者に与えたマイナスは何らかの形で自分に戻ってくるからです。ですから、自分がプラスを得るためには、他者にもプラスを与えなければならないのです。
逆に他者のためにと思って言動すると、意図しないマイナスを生じることが多くなります。一つは他者のために言動するということは、相手次第の言動になりますから、相手に振り回されることになり、自分の精神も肉体も安定的主体的に存在することができなくなります。また、相手の為にしていると思うので、相手が期待したように満足しないと、または感謝しないと、相手を批判的に見るようになりがちです。
形としては相手のためにしていることでも、その根源を見れば、自分が相手のために「したくてしている」ことに違いありません。ですからその意味では、どんなことでも自分のため、自分の満足のためにしていることなのです。そのような理解に基づいてすべての言動をすれば、常に主体的に、自分以外の存在(人間だけでなく、道徳や文化や常識なども含めて)に支配されずに生きることができます。そしてその結果として、自分の言動の結果が思い通りにならなくても、他者のせいにすることもなくなり、自分で責任をとる心も持つことができるのです。それが自分を大事にするという本当の意味です。