今ここに在る、ことの正しい意味

心がその時その場に集中していないと、余計な力が入ったり、逆に意識が散漫になって力を発揮できなくなります。集中できないのは、心が他のことに向かっているからです。ですから、その時その場以外のものから心を離すことができれば問題は解決することになります。

瞑想が集中力を高めるのは、想いから離れることを繰り返すことによって、自分の心が向く方向を意識的に主体的に決めることができるようになるからです。それこそが、「今ここに在る」ということの本当の意味なのです。ですから、「今ここに在る」という状態によって人間は最大の力を発揮することができるのです。

「今ここに在る」ということは、単純に今が良ければよい、という考えではありません。たとえばあなたが小さな子どものときには、「今ここ」にいることは自然なことでした。今欲しいものを求めることだけをしていればよかったのです。自分の欲求だけに忠実であればよかったのです。しかし大人になると、いろいろと自分のこと以外、今だけでなく過去や将来を考えて言動するようになりますから、自然に心は今とここ以外にも向くようになります。

心がそのように動くことは生きていくうえで必要なことですから、そのこと自体が問題なのではありません。必要でないことや、必要であってもわからないことやできないことを考えること、今向けなければならない対象から心を外すこと、そういったことが問題なのです。つまり、心が勝手に動き回るのではなく、自分が意識的に心を動かせるようになればよいのです。

何かをするときに、それだけに集中し、それが終わってから、または必要に応じて、次のこと他のことに心を向ける、そのような心の使い方ができる状態こそが、正しい意味での「今ここに在る」なのです。