小さな愛から大きな愛へ

大きな愛とは世界を全体を愛する愛です。全体を愛するということは当然ながら自分自身を愛すること(自分を受け入れること)も必然となります。しかし自分を愛すること、世界を愛すること、全体を愛することは難しいことです。

それに比較して、何か特定の対象、個人であれ国であれ神であれ、特定の個別の存在を愛することはそれほど難しくありません。なぜなら小さな愛は、その対象が何であれ自我から生まれるものだからです。また、愛は愛のあるところに育つものです。子供時代に愛されなかった人は愛することが難しく、また一般に誰でも愛されればその相手を愛しやすいものです。自分の中に愛を感じることができない人でも、愛されることによって愛を感じやすくなります。そして自分が愛されていると実感できれば、自分自身を愛することもしやすくなります。

このような理由によって、最初から世界を愛そうという博愛を目指すのではなく、個別の存在を愛することから始めることが、大きな愛を育てるうえで必要なことです。

愛を育てるためには、自分の中に愛があると思えることが必要です。そのためには、自分の愛に懐疑をもたずに、愛してると思うことが必要です。小さな(個別の存在に対する)愛は、結局は自分で愛していると思うことでしか確認できません。ですから自分の中に完全な愛の存在を求めずに、素直に自分が選んだ対象を愛していると思えばよいのです。

愛すると言いますが、「愛する」とは「~する」という意味の動詞ではありません。愛するとは何かの行動を意味するのではなく、愛しているという状態を表す言葉です。しかし、愛を育てるために、愛していると思っている状態だけでは発展がありません。

愛を育てるためには表現しなければなりません。表現することによって、愛は活き活きとその力を発揮してくれるのです。それを実感することによって愛はあなたの内で深まり大きく育つのです。そして、表現しながら、愛を深めること、突き詰めることが必要です。愛していると思い、愛を表現するだけではなく、自分の愛をできる限り突き詰めていくことが必要です。小さな愛であっても、それが突き詰められたときに、大きな愛へとつながる道が開かれるのです。

ですから大きな愛を得るために、どのようなものでも良いですから、小さな愛を、すなわち、個別の存在への愛を得て、その愛を表現し、深め、突き詰めることからスタートしてください。小さな愛が極まったときに大きな愛はおのずとあなたの前にその姿を見せることでしょう。