本来の自己、豊かさ、真理の関係

前回お話した本来の自己へと近づくと、現象レベルでの幸せを得ることができます。それはまわりの人と比較しての豊かさではなく、その人がその人らしく生きていくことができ、その中で心の平安を得た毎日を過ごせるという意味においてです。さらに瞑想が進めば自然に宇宙の真理を悟ることもできます。その過程において瞑想のやり方が変化することはありません。同じ瞑想を続けることによって、自然にその方向へと進んでいくことになるのです。なぜでしょうか? それは、現象レベルでの幸せというものと宇宙の真理というものが、本質的には同じものの現れであるからなのです。ですから現象レベルでの幸せや心の平安を得ることと、真理を得ることが二つの違うレベルのことだとか、違う世界のことだとか、そのように考えることは間違っているのです。しかし肉体と精神の組み合わせという表現形態をとっている私たち人間は、違う現れを違う存在として認識してしまうのです。

例えて言えば、それはあなたが飛行船にのって宇宙に飛び出すときの体験に似ています。地球を飛び立って最初に見るものは、それまで見えなかった広い範囲の地表です。それはちょうど、自我と一体になって生きていた時と違って、自我から離れることでより広い範囲で自分という存在を意識することができるようになるのと同じことです。そしてより広い範囲で自分を意識することができれば、自然にそれまでよりも自分本来の能力を発揮することができ、また困難を回避する知恵も発揮されるようになりますから、当然の結果として現象レベルでの幸せを得やすくなるわけです。

飛行船がさらに飛び続ければ、それまで実感をもって理解することが不可能だった、地球が丸いということも確信することができるでしょう。つまり自分の本当の姿を知ることになるわけです。そして、本当の自分というものを知ることが、まさに真理を悟ることなのです。このように、本来の自己ー幸せー真理というのは、一つの連続した体験なのです。

しかし、この飛行船の例が示すものは、本来の自己ー幸せー真理という道程だけではありません。上記のように飛行船は単に地球から遠ざかっただけであり、飛び方を変えたり飛ぶ方向を変えたわけではありません。それがしたことは、最初のスタートと同じように、上に向かって(地球から離れる方向へ)飛び続けることだけだったのです。

瞑想も同じです。現象レベルで幸せになることも真理を得ることも、同じ作業の結果に過ぎません。必要なことは、瞑想において最初にする、自我から離れる、という作業を継続することだけなのです。

それでは、その継続のために必要なものは何でしょうか?飛行船が高度を上げ続けるために必要なのは、さらに上方へ向かうための方向付けとエネルギーだけです。瞑想においては、その方向付けは目的意識であり、エネルギーは意志の力です。正しい目的意識と意志を保つことが、必然的に瞑想を継続させ、継続が必然的に最終目的である真理へと近づけてくれるのです。

その意味で瞑想する者は常に初心に返らなければなりません。正しい目的意識を忘れないようにしてください。瞑想することで現象レベルで好ましい結果を得ることがあると、どうしてもそちらへ意識が向いてしまい、いつの間にか、瞑想の目的が何か自分が望むものを現象レベルで手に入れることになってしまいがちです。そうなると、自我から離れるどころか、逆に自我へ近づくことになってしまいます。

また意志を保つことも必要です。瞑想が惰性になっては飛行船が上方へと進むような推進力が発揮されません。目的意識があっても推進力が発揮されなければ、それは地上で上空に向けて設置された状態の飛行船と同じことで、いつまで経っても地球が丸いことは見えてこないでしょう。