本来の自己とは

2013年の年頭にあたり、これからますます私たちが幸せになるために必要とされる「本来の自己」についてお話したいと思います。本来の自己とは、自我が形成される以前の、もともとのその人の在り様です。人間の不幸は、それがどのような種類のものであれ、自我の働きによって生まれます。自我とは自分と他者との関係によって働く人間の姿です。「私は男だ女だ」、「私は美しい醜い」、「私は幸せだ不幸だ」等々。普段の意識の中では、自分というものに対する理解は、すべて自分以外の存在と自分との関係に従って作られているのです。

その結果として、常に他者を意識して、相手と比較したり、相手とうまくやろうとしたり、相手から評価してもらおうとしたり、相手を攻撃しようしたり、あらゆる言動が他者に影響されるようになるわけです。そのような在り方はまさに、他者に振り回され、他者への反応だけで生きていることになり、到底本当に幸せになる生き方はできません。

それでは、そのような他者との関係を作っている自我以前の自分とは何でしょうか?関係を作るからには、必ず他者と自分という二つの存在が必要です。その自分(自我が作られる前の)こそが「本来の自己」なのです。自我は人間集団である社会の中で生きていくうえで絶対的に必要なものですから、生まれ出ると同時に自然に形成され始め集積されていきます。その結果自然に「本来の自己」はその陰に隠されていき、やがて自分というものを自我としてだけ理解するようになってしまうのです。その結果として自我に振り回されて苦しみの多い人生になっていくわけです。

ですから私たちが幸せになろうとするなら、社会の中で生きていくうえで必要な自我を働かせつつ、同時にその自我に振り回されない在り様、すなわち「本来の自己」を再び手に入れなければならないことになります。それでは「本来の自己」の本質的な内容は何でしょうか?それを具体的にどのように表現するかは、個々人によって違います。「本来の自己」が何者にも影響されない絶対的な存在であるにしても、私たち人間がする表現は、その人の過去を反映せざるを得ないからです。

しかし具体的な表現ができなくても、その由来を解くことによって、本質を私たち一人一人が感じ取ることは不可能ではありません。ではその由来とは何でしょうか?それはこの宇宙の根本的なエネルギーの働きなのです。人間は、その他すべての存在と同様に、無限の宇宙の根本的なエネルギーの現れです。その根本エネルギーには、表現性、変化性、根本性という三つの基本的な性質があります。表現性=常に自分自身を表現しようとする力、変化性=常に変化し固定しない力、根本性=すべての存在に共通する大本の力、の三つです。この三つの性質の力によって「本来の自己」が生まれたのです。すなわち、無限宇宙のエネルギーが、その変化性によって何も無いところに縁を作り出し、表現性によってその縁に従った個別の存在が生み出され、そして根本性によってその個々の存在に無限宇宙の基本三性質が引き継がれるわけです。

このように考えれば、私たちが揺るぎない絶対幸福を手に入れようとするなら、自我に使われるのではなく、「本来の自己」として自我の働きを主体的に使う、という道以外にはないことが理解されるはずです。その目的のために瞑想があります。自我から自由になり、「本来の自己」へと到達する道が瞑想なのです。